どうしたらいいのか、というのは、実はわからないわけではない。

アスランは、目の前でふて腐れたような顔をしている少年を見て、ため息をついた。

いつも、されていることだ。夢中でわけがわからなかった頃ならいざ知らず、すっかり慣れた今なら、わからないわけじゃない。

「ほら、シン」

ブーツを脱いでベッドに座り込んだまま、動けなくなっていたシンの頭を抱き寄せて、とりあえずキスしてやる。

恐らく、キスも初めてなのだろう。

緊張して硬くなった唇からいったん離し、優しく髪を撫でてやってから、また、口付ける。

今さっきよりも柔らかくなったそれを軽く噛み、驚いて開いたところで舌を滑り込ませる。

応えることも知らない舌を絡め取り、緩く、吸い付く。

「んっ、んんっ・・・」

息継ぎのし方も知らないのだろう。苦しそうに呻くので、離してやる。荒く息をつくそこから、こぼれる唾液を舐め取った。

「隙間開けてやっただろう。窒息する気か？」

「し、知りませんよそんなコト・・・・っ」

「じゃあ、憶えておけ」

言って、また、キス。

相変わらずシンは息が継げず、しかしそういえば自分もよく窒息しかけたなぁと思うと、妙に微笑ましい。

「キスが下手だと、女の子に嫌われるぞ」

「俺が好きなのはあんただって言ってんだろ！」

それはそうだ。

後の課題、と言うことでそれはもう放り出し、アスランはシンの赤服を脱がしにかかった。

脱がし合ってセックス、というのを、そういえば最近していない。大人しく脱がされる少年は、なんだか少し、可愛く見えて、まだ細い体があらわになると、その思いは更に強くなった。

「お前も、ちゃんとシャワー浴びてるんだな」

クン・・・と、耳元に鼻先を埋めて匂いをかぐ。グリーン系の香料がわずかに香った。

良い匂いだ。

少年は真っ赤になってアスランを睨む。

「あんただって、髪の毛濡れてるじゃないか」

「ああ。初めからそのつもりだったからな」

相手は議長のつもりだったけれど。

いや、どうせこの後議長の相手もするのだろう。

あ、と。アスランは思った。

視線だけで、ソファに座ったまま、面白そうにこちらを見ている男を探る。

シン、初めてなんだよな。

このまま三人で、になだれ込むのは少しかわいそうだ。

しかし、そもそもの原因は、議長にスキを見せた彼なのだ。

諦めて・・・もらうしか、ないか。

生きていくのに、それはとても重要なことだ。

「アスランさん？」

突然手を止めたアスランを不審に思ったのか、シンが訝しげに覗きこんでくる。

まっすぐな、赤い瞳。ちょっとかわいそうだ。でも仕方が無い。

「いや、すまない」

触れるだけのキスをしてやって、ごまかす。

かわいそう、だから。

できるだけ優しくしてやろう。

まあ、俺も初めてだから、どこまでできるかはわからないけれど。

「えっと、俺が脱がせた方がいいですか？」

「いや、いいよ」

襟を緩めて、ばさばさと手早く軍服を脱ぎ捨てる。

実用第一のそれは、その分脱ぎ着もしやすくて。

アスランは、すぐにシンと同じ姿になった。

「アスランさん、キレイ」

乗り出すようにしてそれを見ていたシンが、ぽつりと呟く。

「そうか？」

よく、言われるのだが、自分のどこが綺麗なのか、アスランにはよくわからない。

「お前もわりと綺麗だぞ」

肩から背中を、そっと撫でてやって。

「この辺、まだ細いが・・・骨格が良いから、もう二、三年もすれば逞しくなってくる」

「あ、は、はい」

少年がびくんと震えたのを見て、アスランはやっぱり可愛いと思った。

「大人しくしとけよ。酷くはしないつもりだから」

「は、い」

緊張する少年に、また、キスしてやって。

自分の経験を反芻し、どうされたらよかったかを思い出す。

初めの頃は、たくさん触ってもらうのが恥ずかしかったけど気持ちよかったよな。

とりあえず、そうしてやろうと決めた。

少年らしく張りつめた肌に、そっと手を這わせる。さらさらとしていて、しかし熱くて。思ったよりも気持ちいい。

困ったように見上げてくるから、瞼にキスして閉じさせて。そのまま、頬に、喉に、首筋に、やがて胸にとキスを落として。

胸、俺イイんだけど。

試しに、ぺろりと舐めてみると、ひくんと震えてきゅうっとしこった。

気持ちいいらしい。

それがわかったから、きゅうきゅうと舌を押し付けて、背を撫でていた手も戻し、もう片方も弄ってやって。

「っ、はっ・・・・」

「気持ちいいか？」

聞いても答えない。当たり前か。

胸で感じるなんて、恥ずかしいものな、普通。

だからそのままそこを弄り続けていると、髪を掴まれぎゅうっと引かれた。

「や、めてくださいよっ」

「気持ちよくないか？」

「・・・・・っ」

わずかに涙を滲ませた赤い瞳。

ちょっとぞくりとした。

俺も男なんだなぁと、今更ながらに思う。

「やりすぎたよ、ごめん。だってお前可愛くて」

「可愛いとか、言わないで下さいよ」

「そうか？可愛いぞ」

こことか、と、矛先を変える。

薄い下生えの中から、立ち上がりかけている、それ。

「ぅあっ・・・」

「自分でしたりは、するんだろ？」

先端から根元まで、するりと指先でなぞって少年の身を竦ませてから、アスランは身を屈めてはくりとそれを咥えた。

入れさせるわけではないのだから、ここまでしなくても良かったかと、そうしてから思ったが、先に気持ちよくさせてやっても良いだろう。

初めてでは、後ろで十分楽しめるはずもない。

「あ、は、はっ、あんっ、アスランさんっ」

深く咥えて舌を絡め、たちまち限界まで大きくなったものを唇でしごきながら出し入れし、苦い液をこぼしだした先端を、ちゅっ、と吸って。

そろそろイキそうだと思い、咥えなおそうと少し口を離したところで、射精された。

「あ」

唇から頬までをシンの精で濡らされ、顎から滴るそれを指先で拭い、アスランは憮然と言う。

「お前な、もう少し我慢しろよ」

「できませんよっ・・・」

シンはもう、半泣きだ。

脚を閉じ、後ずさろうとするのを、膝を掴んで止める。その膝は、少し震えていた。

そのまま、掴んだ膝から、腿の内側の際どいところまで、唇を滑らせる。

「っあっ」

上がる高い声。アスランもだんだん楽しくなってきた。

「まあ、感じ易いのは良いことだ」

前に、アスランもそう言われたことがある。

それから、ふと思いついてベッドサイドに手を伸ばし。

「議長、これをお借りしてよろしいですか？」

「ああ、かまわないよ」

その声に、シンがびくりと反応した。

「うぁっ」

今更ながらに、この場にもうひとりの存在を思い出したようだ。また閉じようとする膝をしっかりと開き、アスランは呆れたような声を出した。

「往生際が悪いぞ」

だいたいお前が悪いんだ。

議長にスキなんか見せるから。

・・・まあ、相手が議長では仕方がないのだろうが。

それでも、脚を抱えなおす振りをして、議長の視線からシンを隠すように身を置いた。いっぱいいっぱいのシンにはわからないだろうが、気持ちの問題だ。

そうして。

「力、抜いとけ」

ベッドサイドから取ったジェルを、手のひらに落とす。

冷たいまま使われたのでは驚くだろうと、しばらくそのまま温めて、軽く握って指に絡め、あらわにしていたシンのそこに、触れた。

「ひゃっ」

「力抜けって」

そこは、固く口を閉ざしてアスランの指を拒む。

初めてなんだから、仕方がないか。

手のひらでそこにジェルを塗りたくり、それからシンの体に乗り上げて、パニックを起こしかけている赤い瞳を覗きこんだ。

俺のこと、好きだって言うのなら。

「大丈夫だから、任せておけよ」

「あんただって初めてのくせに」

口だけは元気な少年に、苦笑して。

「そりゃあ、するのは初めてだがな。される方には慣れてるから。辛くないように、できるから」

だから、安心して、体任せてくれ。

そう言って、キスをして。

優しく、舌を絡めて、ちゅっ、と音を立てて唇を吸う。

大丈夫、と、なだめるように髪を撫でて。

赤い瞳がぼうっと見上げ、力が抜け切ったところを見計らってもう一度、そこに触れる。

力を入れる間も与えず、ずる、と指先を含ませた。

「っあ・・・・っ」

「痛くはないだろ？」

彼のそこはきつくて熱い。入り口にジェルを足してやってから、容器を放り出した手でイったばかりの前も弄ってやる。

「やだ、やめ・・・」

下半身パニックだろうなぁと思う。

しかしそのばたばたと暴れる脚は、体重をかけて押さえ込めば障害になるものでもない。また髪を掴まれそうになって、その手を捕まえてシーツを掴ませてやる。素直に従うのが、少し可笑しかった。

どさくさで、指まで増やしてそこを広げる。

「やっ、や、あっ、やだ、アスランさんっ」

「お前、自分から来たんだろ。今更やめられるか」

シンの痴態に、アスランも刺激されている。

自分で自分のそこを準備しているときと違い、そこを使っても良いのだ。オスの本能が疼く。

「辛くないだろ？ほら」

指を三本に増やすと同時に、前も口で咥えてやった。

後ろに差し込んだ指で、直接反応する場所を弄ってやったせいで、すっかり力を取り戻したそれは、アスランの口腔でひくひくと震え、それが後ろの刺激に連動していることに気づき、嬉しくなる。

もう一度、イかせるか。それとも。

こいつ体力あるし、何度イかせても大丈夫だろうけど。

アスランは、ちらりとギルバートに視線を向けた。

そろそろ、あっちが飽きてきそうだ。

「シン、もう、いいか？」

「ふぇ？え、あ、やっ」

囁いた言葉の意味を、理解しているのかいないのか。

していないだろうと思いつつ、それでもアスランは熱く絡みつきだしたそこから指を抜き取り、力を失った脚を掴んで腰を上げさせた。

もう、今ここはこれ以上緩くならないだろう。

痛いだろうが、悦くしてやれるように頑張ろう。

自分のものにもたっぷりとジェルを絡め、ひくひくとうごめくそこに、押し当てる。

くちゅり、と濡れたあたたかい感触。背筋が粟立った。

「シ、ン・・・」

「あ、ああ・・・・っ」

初めてのシンは、やっぱりきつい。アスランも初めてだ。どのくらいで裂けてしまうのか、加減がわからない。

どうしていいかわからずに、途中で止まってしまう。中途半端な場所をきゅうきゅうと締め付けられ、辛い。

「シン、シン」

キスをして、力を失いかけたそこに、指を絡めた。

「もの凄く痛いか？とりあえず、抜くか？」

初めての苦痛は、アスランも経験したから知っている。

その時よりも、よほど慎重に準備してやったつもりだったが、痛いものは痛いだろう。

しかしシンは、シーツを掴んでいた指を一度硬直させてから、ふい、と浮かせてアスランの背を掴みしめた。

「や、だ。ちゃんと、しろよ」

きゅうっとしがみ付く熱い体。アスランの体も熱くなる。

「・・・・わかった」

ず、と腰を押し付けると、きついながらもそこはきちんと受け入れた。

根元まで入った感触に、アスランは深く息をつく。

気持ちいい。

きつく締め付けてくるそこは、もちろんだけれど。

腕の中で、震えながら自分を受け入れている存在。それ自体が気持ちいい。

「シン、入った」

汗に張り付いた前髪を払い、赤い瞳を覗き込む。水の膜を張ったそれが、瞬いて雫を溢し、それからぎゅうっと閉じてアスランの胸元に、額を押し付けてきた。

それをあやすように撫でながら、馴染むのを待つ。

すぐに動いては、きっと傷を付けてしまうから。

少しだけ、我慢して。優しく、キスをしてやって。

「・・・いいか？」

頃合を見計らって聞けば、言葉もなくこくこくと頷く。

その髪を撫でてやり、腰を、抱き寄せて。

「んっ、はっ、ああっ・・・」

十分に馴染ませたそこは、苦痛ばかりを訴えるわけではないらしい。上がる声はどこか甘さを含み、特に反応する場所を集中して突いてやれば、腰がうねって泣き声が上がった。

イイ、のかも知れない。

アスランの方も限界が近い。初めての快楽に、おかしくなりそうだ。

「シン、シン、いいか？」

自分の声が、かすれているのがわかる。興奮のし過ぎだと自嘲する。

だって仕方ない。気持ちよすぎてこいつは可愛い。

ピッチを上げて、激しく突き込む。もう、遠慮も会釈もいらない。

「やっ、あっ、アスランさ・・・んはっ」

シンの前も、刺激に立ち上がっていた。先走ったものでしっとりと濡れたそれに指を絡め、汗を含んでもいい匂いのする耳元に、唇を寄せて。

「シン」

囁いて、やると。

「やぁっ、ああっ・・・」

背中に爪を立てられる。それを、気持ちいいと思う。

ばさばさとシンの黒髪が打ち振るわれ、続けざまに声が上がる。

手の中に、熱いものが溢れると同時に、アスランもシンの奥深くに放っていた。

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